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2008年8月26日:公開

共有資源利用における情報と協調予測の効果について
---実験的アプローチ---

鷲田豊明
上智大学地球環境学研究科
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概要


本稿では、環境意識形成過程に対する理解を深めるために、情報と協力可能性予測に注目した経済実験を行った結果、およびその分析を示す。

実験は、環境や資源問題からはニュートラルな、投資ゲームをもとにしている。被験者に二つの市場を提示し、一方は共有地を想定して他者の投資総額に収益率が依存する市場であり、もう一方は、それとは他者の投資とは無関係に収益の得られる市場にしている。

実験は、(1)他者の投資状況についての情報がある場合とない場合について、(2)コミュニケーションのある場合について、それぞれの影響を調べた。また、いずれに場合においても、他者の協力予測を報告させた。

結果として、情報が与えられることによって、それまで平均以上の共有資源に対する投資を行っていたものは投資を抑制する方向に、逆に、控えめだった被験者は積極化する方向に変化した。

いずれにしても、被験者の投資は、よりナッシュ均衡の近傍に集中するようになった。共有資源ゲームにおいてはナッシュ均衡のリアリティが高いことがわかった。 他者の協力可能性に対する予測は、環境問題などで従来考えられていたような、他者の協力が高まればみずからも積極的に行動するというものでは必ずしもなかった。