温暖化メカニズムと地域分割された経済システムを組み込んだ動学的統合モデルを用いて各地域の交渉指向性を推計する。その際、世界的交渉が決裂した状態をナッシュ均衡として求め、交渉が妥結した場合の状態をナッシュの交渉解によって求める。
地域分割は、日本、米国、EU、中国、インド、ロシア、中東、高所得国、中所得国、低所得国の10地域にした。終端条件をニュートラルにするために30期、300年の長期シミュレーションとして計測した。
各地域における交渉解とナッシュ均衡による交渉水準の差の割合を交渉指向性指標とすると、EU、高所得国、日本、中東、アメリカ、中国、低所得国、インド、中所得国、ロシアの順となることがわかった。
また、インドや低所得国においては、ナッシュ均衡解から交渉解に変わることによって著しく、温暖化ガス排出の減少が起こることも分かった。
EUが、単に交渉指向性が強いばかりではなく、当面する期間においても交渉によって大幅な削減に合意する可能性があることも示された。
インドや途上国は、交渉妥結によって、近い将来における大幅な削減は行わないものの、将来における削減も含めれば、全体として、決裂時と比べて大幅な削減となることも示された。
全体として、結果に一定のリアリティがあり、分析手法の有効性が示された。
※ なお、シミュレーションを追試したい方にはWindows上で稼働させられる実行ファイルを提供いたします。以下のサイトをご覧ください。
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※ このテーマでの研究経過についてはブログ「温暖化対策の経済学」詳しく見ることができます。 |