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エコロジーと汎精神
2005年2月19日公開
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概要
 
これからの環境保全型社会を構築する上で、エコロジー思想に対する理解と普及はいっそう重要になっていくだろう。筆者はすでに別の論文で、エコロジー思想が、グリーン・リベラリズム(環境自由主義)と深い関連を持つことを示した。グリーン・リベラリズムとは、個人の自由と環境保全を両立させるような新しい自由主義のことである。

その中で、個人あるいは社会として、生物やそれを含む生態系に対する共感としての、環境意識の高まりの重要性を指摘した。それは、言い換えれば、他の生物や自然環境に対する人間の価値意識の問題である。人間という存在の絶対的優位性にこだわっている限り、環境保全型社会システムも持続可能な地球社会のあり方も、確かなものとしては見えてこない。

このような意味での人間と自然の関係を考える上で、人類がこれまでに考え出した宇宙観、世界観が、自然をどのように価値づけていたのかを理解することはとても大切なことだと私は考えている。

本稿では、エコロジーの前提となる、生態系の基本問題を示し、それを受け止める思想が、宇宙や世界の根源者を求め続けた東洋思想の中に含まれていることを明らかにしたい。それによって、エコロジーという考え方が日本社会の中に定着する、あるいは核心となって広がる一つのチャンネルを示す。