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生命、表現および自由
2006年10月19日公開
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概要
 
 地球環境問題は、人間と他の生命のあり方についての哲学的考察を求めている。人間中心主義とか生物中心主義、生態系中心主義という言葉が繰り返しあらわれるところにも、そのことの証明がある。人間もまた、他の種と同じように、地球上に進化の結果として生まれた一つの生命に過ぎない。しかし、その人間という種は、地球の環境を変化させるほどまでにその知識と技術を肥大化させた。それは、人間と他の生命との物理的な距離を大きくするとともに、精神的な距離も大きくしていった。環境問題を解決するためには、さまざまな政策が必要だが、そのまえに、人々の意識において地球における他の生命との距離を正しくとらえ直す必要がある。本稿では、表現と固有性という概念を用いて、生命の本質を把握し、人間と一般の生命との距離を確認する試みを行った。日々私たちが生活の場で行っている表現行為と生命一般の本質的な表現行為の深い関連性を確認することによって、他の生命の行為に対する共感や感情移入のための一つの道筋を与える。