論文一覧

循環型市場経済の成長と静脈産業自立の条件
ーフォン・ノイマンモデルによる分析ー
2005年7月6日公開
2005年7月10日一部修正
論文全文PDF
 
概要
 

 先進国ですすめられてきた法的な整備と、循環に参加する企業や消費者の環境意識の高まりと分別収集に協力するなどの自発的な行動は、廃棄物に対する見方を大きく変えはじめている。例えば、廃ペットボトル、廃缶、廃ビンなどの形で日々大量に発生している廃容器が、発生抑制まではいかなくても、少なくない割合で再利用、再資源化に回っている。さらに、廃家庭電化製品、あるいは廃自動車なども、再資源化への動きが著しく促進している。そして、それらの多くの部分が、今日の経済活動、あるいは市場的な原理のもとで機能していることも事実である。

  こうした方向をいっそう前進させるための基本的なテーマは循環産業、あるいはいったん廃棄されたものをもう一度利用可能な形に戻すという意味で、静脈産業を市場経済の重要な一翼を担う産業として発展させることである。

  本稿では、経済成長と利潤追求を含む市場均衡をフォン・ノイマン均衡で表現し、資源を明示的に組み込み、リサイクリング部門は、外生部門からの輸入による資源と代替的な資源を再生するモデルを構成する。そして、この静脈産業を代表するリサイクリング部門が、どのような条件の下に自立性(viability)を実現するのか、その際、特に外部からシステムに投入された資源がどのように廃棄物に転化し、資源と廃棄物との関係から与えられる条件がどのようにリサイクリング部門の稼働可能性に影響を与えるのかを詳細に分析する。

  リサイクリングを含むモデルの分析においては資源の動態を組み込むことは決定的に重要なことなのである。そして、技術的にみて、資源レベルでの完全なリサイクリングが可能であっても、すなわち資源をまったく散逸をさせない技術が維持されていても、正の成長率を実現する経済、およびリサイクル部門が一定の技術水準を有し、労働者への実質分配がある程度以下に抑えられている限り静脈産業の活性化は発生することを明らかにする。また、そのようにリサイクリング部門が稼働することが、経済の最大成長のために不可欠の条件であることを明らかにする。さらに、モデルを構成する外生的パラメータに関する比較静学を詳細におこなうことによって、廃棄物の発生、輸入資源の実質価格、動脈産業の資源効率などが経済成長率(したがってまた一般利潤率)、廃棄物部門の稼働規模や廃棄物価格、さらには資源輸入量や資源価格に与える影響に分析を加え、循環が他市場経済がどのようなファクターによって影響を受けるかを分析する。