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CPR投資実験における被験者の脳波特性について
2010年7月31日公開
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概要
 

本研究は、この複雑な投資行動と脳の働きを関係を解明するための一つの試みである。この目的のためにCPR実験を行い、その実験過程で被験者らの脳波を測定する。各投資決定の段階における脳波をフーリエ解析によって周波数成分スペクトルを導きだし、それとそのステージの投資水準との関係を分析した。

共有資源(CPR)実験は、投資収益率が他者の投資水準に依存するために、被験者の投資行動は単純なものとはならず、それぞれの個性的な判断に依存する。他者の行動の予想とともに、自らの投資が他者に正あるいは負の影響も与えることを考慮する。そのうえで、積極的に投資するのか、抑制するのか、これもまた誰にも明らかな方向性がある訳でもない。このような緊張感のもとでの投資行動が、脳波の出現とより明確な関係性を示すのではないかとの仮説のもとで研究を進めた。

結果として、1回ごとの投資の変動をフォローするようなダイナミックな脳波の変化との関係をとらえることはできなかったが、被験者の静的な脳波の特性が被験者の全体的な投資行動と強い関係があることを示すことができた。具体的には、δ波、θ波、α波、β波のなかで、α波の割合の増加は、積極的な投資行動を促し、逆にβ波の増大は、抑制的な投資行動と関係する。そのことの意味は、たとえば、事前に投資前の被験者の脳波特性をとらえておくことによって、投資段階での平均的な行動を事前に予測できる可能性がある、と言い表すこともできる。