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2004年6月3日:公開
2004年6月7日:改訂

産業廃棄物税とリサイクルの応用一般均衡分析

鷲田豊明
豊橋創造大学
全文(PDFファイル)
 
シミュレーションプログラム(EPAM0.3)
 
概要


 産業廃棄物税は、日本で実施される初めての本格的な環境税という性格を持っている。地方自治体単位で実施されているという特殊性はありながらも、深刻化する産業廃棄物による環境負荷の抑制効果を期待できるものである。現状では確かに、廃棄物処理コストに対する収入確保というねらいが重視されている。しかし、今後最終処分場の逼迫が長期的にコストアップを引き起こし、不法投棄に対する動機付けをもたらし続ける可能性を考えると、環境負荷の抑制効果、さらにはリサイクル促進効果を正しく評価することは極めて重要になっている。自治体単位で実施されていること、さらには未だ実施されて年月を経ていないために、現行の1トンあたり1000円という税率が、どれほど抑制効果を生み出すのかは、表れているデータだけでは評価が困難である。

 本稿では、リサイクル部門を重視した40部門の応用一般均衡モデルを構成し、2000年の産業連関表をベースにしたデータセットを用い、産業廃棄物税が全国的に実施された場合の、最終処分抑制効果、リサイクル促進効果を推計した。結果として、1000円の課税では、70万トンの最終処分の抑制効果をもたらすことがわかった。これ自体では、必ずしも大きな効果とは言えないが、同時に67万トンのリサイクル促進効果と、またもう一つの組み込まれている環境負荷である二酸化炭素排出についても、42万トンの削減効果をもたらす。税収中立のシミュレーションも行ったが、産業廃棄物税に対応する所得税の減税、資本税の減税という税制改革を随伴させることによって同じ規模の効果を社会的な厚生水準の大幅な低下を回避しながら実現することがわかった。


(注)本論文は、2004年6月5日神戸大学環境経済学研究会(COEセミナー共催)で発表された。