ここで,(E4)におけるEは生産者にとって利用可能なエネルギーの上限をあらわす。ただし,この E は実際に生態系,ないしは生産者に到達している太陽エネルギーではない。森林生態系*では 2 〜 3 \%,草地生態系*では 1.5\% 前後といわれる生産者の*粗生産効率を q とし到達する太陽エネルギーを S とすると(注9),この E は,
このことの意味は,上の例でとらえると,現状で何らかの要因によって B 点に生態系の構成があると,システムは相互的な協力関係によって構成を A 点に移すということである。すなわち,もともとの分解者はみずから新たな分解者に生産者有機物の利用を許すという行為にでるのである。新分解者に対する無意識の利他主義*(altruism)が旧分解者の内に働くことを意味する。もちろん A 点を越えてまでゆずるということはない。もしそうすれば,生態系はみずから縮小循環に陥ってしまうからである。したがって,システム全体に対して適者生存の原理が働くということは,結局それぞれの個体がシステム全体の最適化にみずから協力するという遺伝的動機がはめ込まれていることを意味している。したがって,個体はみずからが個体の属する種の*進化の過程で獲得してきた最適行動原理と,システムとして生態系全体の保存をはかるために活動する最適行動原理の二つを遺伝的に獲得しているということになる。*最大呼吸仮説にもとづく生態系構成は進化的安定性*をもっているということになるのである。