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目次
   2.2 節 原油価値による家計支出の評価
    2.2.1 必要原油と原油価値
    2.2.2 必要原油体系の理論的枠組み
    2.2.3 産業連関表の処理
    2.2.4 導出された必要原油量体系の検討
    2.2.5 分析例:自動車と電車
    2.2.6 家計調査項目への対応づけ
    2.2.7 世帯類型別データの分析
    2.2.8 都市階級別データの分析
    2.2.9 必要原油量の要因別弾力性の計測
    2.2.10 市場価格と原油価値

2.2 節 原油価値による家計支出の評価   (目次へ

2.2.1 必要原油と原油価値   (目次へ

前節ではミクロ的行動基準としての価値体系について議論した。本節では定常循環系に向けて重要な課題である資源節約な方向へ家計の消費行動を動機づけるための価値体系について実証的な分析を行なう。資源としては、使用規模の巨大さに対する資源の希少性の深刻さにおいても、使用した後の廃棄物質の問題でも最も関心を集めている石油に注目しよう。

われわれはさまざまな財あるいはサービスに支出するが、それらのすべての対象は直接、あるいは間接的になんらかの意味で石油の恩恵をこうむって生産されている。石油の直接の製品としてはエネルギー源として用いられるガソリン、灯油あるいは重油といったものと、ナフサを媒介にして石油が素材として利用される合成樹脂、合成繊維、合成ゴムなどがあり、それらはさらに他のさまざまな製品となる(注1)。しかし、そうした直接的産物ばかりでなく、さらにそれらを原材料として二次的生産物が生産され、またさらにそれらが他の生産物の原材料になるといった具合に、生産の連鎖的関係を考慮すればほとんどすべての財、サービスの生産に石油が必要とされているのである。

われわれは消費の組み合わせをどのように変えれば、貨幣額でどれくらいの消費支出の削減、節約を可能にするかはすぐに分かる。しかし、同じような意味でわれわれの消費支出の変更がどれだけの石油消費の削減、節約をもたらすかはほとんど知らないといってよい。たとえば、ガソリンの消費を1l節約した場合、精製のための原油の投入とそれから生産可能なガソリンの技術的、数量的関係さえ知れば原油そのものをどれくらい節約しているかを知ることができそうであるが、実際はそうはならない。ガソリン1lの消費削減はそれ以上の効果をもたらすのである。まず、その精製のために要したさまざまな他の原材料、電力などの投入あるいは、ガソリン1lに帰属させうる設備の用役、あるいは生産点から消費点までの輸送コストをまず節約する。するとそれらの節約された財サービスを生産するのに必要な財サービスも節約することによって、間接的にそれらの節約は原油投入の節約になるのである。同じような意味で、われわれのさまざまな消費財の生産には間接的に原油が投入されているが、その量を測ることは容易ではない。しかし、消費を通した原油の節約を考える場合この財を手に入れるまでに間接的に要した原油の総量を知っていることは必要不可欠である。

この、各財の1単位の生産に直接・間接に必要とされる原油の量をそれぞれの財の必要原油と呼ぶことにしよう。問題になっている財・サービスのすべてについて必要原油が明らかにされたものを必要原油体系と呼ぼう。するとその体系は一つの原油価値体系になっている。すでに指摘したように、われわれは、価値あるいは価値体系を目的に従属した評価体系としてとらえている。したがって、この原油価値体系にもそれをもたらす目的が対応している。その目的は、最終消費をもたらすのに必要な原油投入量を最小にすることである。そして、必要原油の体系がこのような目的を実現するものであることは、必要原油の定義そのものから容易に推測できるだろう。そしてさらに、技術体系を結合生産を考慮しないような基礎的なものを前提にすると、この原油価値体系で計って費用の最小になるよう技術を生産者が導入すると、それはまったくのミクロ的な行為であるにも関わらず、マクロ的な目的である、社会全体としての最終消費の維持に必要な、したがって社会の定常的な維持に必要な原油を減少させることになるのである。すなわち、必要原油の体系は原油価値の体系と内容的に同じものをあらわすのである(注2)。

この節では具体的に、各消費財あるいはサービスを消費者が手に入れるために間接的に必要とされる原油の総量を1985年の産業連関表183部門表を使って導出する。その場合、一般にある財1単位を生産するために必要な各部門の生産水準を明らかにしている逆行列表を用いるのではなく、そこで無視されている各部門の資本設備用役の使用、そして生産、消費段階における輸入財と輸出財の区別、生産者から最終消費者の手にはいるまでの輸送コストなども考慮して財、サービスの生産に必要な原油量を導出することにする。そして、さらに1985年の家計調査年報を用いて、その必要原油量で日本の家計の消費支出の項目を評価し、世帯あるいは地域別の生活様式ごとに支出構造を評価する。さらに、各世帯の必要原油量の、それを規定している要因に対する弾力性を計測する。これらの分析によって、家計消費支出段階における原油節約のためにわれわれが努力すべき方向をより確実にとらえることが可能になる(注3)。
2.2.2 必要原油体系の理論的枠組み   (目次へ

必要原油量の体系を導出するための方法を理論的にまず明らかにしておこう。はじめに、以下で用いる記号をまとめて示そう。部門数と財の数は同じで一般的にnとしている。ただし、産業連関表を使う関係上、量をあらわす単位は特別に断らない限り貨幣額で計っているものとする。

Aを輸入財投入を除いている非競争型の投入係数行列とする。その第i行、j列要素aijは第j財1単位の生産のために必要な国内財第i財の投入量をあらわす。この投入行列はもともとの非競争型投入係数行列(A'とする)に資本用役の投入係数行列を加えている。すなわち、bijを第j財の1単位の生産による第i財からなる資本設備の減耗分をあらわすとし、これを第i行、j列とする行列をBとすると、A=A'+Bによって構成されている。本来、Bもまた輸入財の投入と輸出財の投入に分けるべきであるが、産業連関表の制約からこちらはすべて国内で生産された財によって構成されていると想定する。

xは国内財の産出量をあらわすn次元列ベクトルである。

eは輸出額構成比列ベクトル。要素和が1になるように正規化している。すなわちeは各財の輸出額の構成比から、その第i要素をeiとしたとき\sum_{i=1}nei = 1となるように正規化して作られるベクトルである。輸出財1単位をあらわすバスケットと考えられる。

xn+1は必要な輸出財バスケットの単位数をあらわす値である。生産、および消費のために財の輸入が必要とされるが、経済を定常的に持続可能なものとして考えた場合、その輸入を賄うだけの財貨が輸出されなければならない。したがって、xn+1は総輸入に対して必要とされる輸出単位数なのである(注4)。

gは輸入原材料投入係数行ベクトルである。すなわちgは輸入係数行列の列和から作成したベクトルである。すなわち、その第i要素をgiとすると、これは第i財1単位の生産に必要な輸入財の総額である。

diは第i財の消費用購入1単位の生産・流通構成比列ベクトルである。このdiはベクトルであることに注意しよう(ベクトル要素と区別するためにサフィックスを上付きにしている)。いま、われわれが国産品のみで構成されている第i財1単位を購入したとする。するとそれはその財の生産部門から生産された生産物価格、卸売および小売の商業マージンと各種の運輸費からなっている。いま仮に、1からs番目までの要素が、農業、工業および製造業に属する部門とし、商業部門の番号をt(卸売)とt+1(小売)とし運輸部門をkからk+p部門までとしよう。diの第j番目の要素をdijとすると、1からs番目までの要素の中では、dii>0でdij=0, (j=1,2,.....,s: j ≠i)となっている。そして、商業および運輸関係の諸部門の要素は購入財の費用構成に応じて正の要素が含まれていることになる。ただし、サービス部門の財の購入費用の中には、こうした商業マージンおよび運輸費は含まれていないので対応するすべての要素はゼロである。そして、以上の想定から、

dii+(dit+dit+1)+(dik+,.....,+dik+p)=1

となっているのである。

さらにわれわれが購入する財の一部は輸入品から構成されていることも考慮されなければならない。確かに、一つ一つの財をとってみれば輸入品か国内生産品かのどちらかである。しかし、社会全体としてみればある一定の割合となっているのであり、われわれが適用する統計はほとんどの場合ある財が輸入財として消費されたかどうかは明らかにしていない。したがって、われわれがある財1単位を消費するという場合、その財は社会全体としてのその財の輸入消費財の構成に応じた割合の確率で輸入財となっていると考えるか、もっとはっきりとその社会的割合の分だけ輸入財として構成されていると仮定することにしよう。そして、この割合を第i財についてdmiと考えるのである。したがって、上の式はこのdmiも含んだ形に拡張されて、

dii+dmi+(dit+dit+1)+(dik+,........,+dik+p)=1

とあらわされる。

次にこれをもとにして、第i財の1単位の購入に必要な輸入原油を求めることにしよう。まず、国内財に対する需給均衡式は、n次元ベクトル式で、

x=Ax+exn+1+di    (E1)

とあらわされ、さらにこれにともなう貿易収支の均衡は、スカラー式で、

gx+dmi=xn+1    (E2)

である。(E1)の左辺は国内生産額、右辺第1項は生産財投入、第2項は輸出、第3項は消費財購入1単位の費用構成である。(E2)式は、eが正規化されているために右辺が単純にxn+1だけになっている。

c'を原油輸入係数行ベクトルとする。このベクトルは輸入係数行列の原油部門に関する行を取り出したものである。すなわち、その第i要素c'iは第i財1単位の生産に必要な原油輸入額である。(E1)および(E2)を満たすxについて、原油部門の番号をlであらわすと、

c'x+xl    (E3)

がわれわれが求める第i財に関する必要原油量となる(注5)。(E3)の第1項は原油の必要な輸入量をあらわし、第2項は原油の国内生産額をあらわしている。(E1)および(E2)で未知数はベクトルxおよびxn+1の計n+1個、そのほかの係数を産業連関表より求めれば、これを解くことが可能である。
2.2.3 産業連関表の処理   (目次へ

われわれが用いるのは1985年の産業連関表(確報)の183部門統合表および固定資本行列である。以下で、上記の各種のデータを構成するとき注意した点を明らかにしておこう。

まず、部門数であるが、183部門統合表の中には、鉄屑部門と非鉄金属屑部門の2部門が独立に構成されている。もちろんこれらを主生産物とする部門は現実には存在しない。それらは現実の部門の副産物として生産されるのであり、こうした結合生産は通常のレオンチェフ(Leontief)体系では完全な処理ができない。そこで、前者を銑鉄・粗鋼部門に、後者を非鉄金属精錬・精製部門に統合した。したがって、計算場は181部門連関モデルとして以下の計算をおこなった。

非競争型の投入係数行列(A')は生産者価格評価表から輸入額を差し引きそれぞれの部門の国内生産額で除することによって作成した。

資本用役投入係数行列は、固定資本行列から作成したが、後者が84部門統合表を基準にしているために181部門に対応するように拡張する必要があった。そのためにまず、固定資本行列からそれぞれの列の列和が1になるような構成比ベクトルを作成した。固定資本行列は1985年において各部門が他のどの部門からどれだけの額の固定資本設備を購入したかをあらわしているフローの値である。われわれはこのフローとしての固定設備の新規投入が既存資本設備のストックの構成比と同じであると想定した。そして84部門から181部門に拡張する場合に、前者から後者への過程で細分化された部門はこの資本構成比が同じであると想定した。もちろん、構成比が同じであると想定したのみで、資本ストックの水準まで同じと考えたわけではない。たとえば、84部門表における「耕種農業」は181部門において「穀類」「いも・豆類」「野菜」「果実」「その他の食用作物」「非食用作物」に分解するが、後者の諸部門の資本ストックの構成比は同じであるとし、ただその存在量にのみ差があると仮定したのである。この181部門化された構成比行列を用いて、183部門統合表にある資本減耗引当の額を乗することによって、資本用役投入係数行列Bを作成した(注6)。

そして、上記のA行列はA'とBを加えることによって作成した。

輸出構成比ベクトルeは産業連関表中の各財の輸出額を要素和が1になるように正規化することによって作成した。

輸入原材料投入係数ベクトルgは輸入額行列を対応する部門の生産額で除し輸入係数行列を作成し、その列和から構成した。

di,dmiは産業連関表中の各部門財の家計消費項目のところにある商業マージン、国内貨物運賃の内訳、輸入表を用いて総和が1になるように正規化することによって構成した。

原油輸入係数行列c'は上の輸入係数行列の原油部門に対応する行から取り出した。

以上のもとに(E1)、(E2)および(E1)の計算を実行し、x,xn+1を求めた(注7)。
2.2.4 導出された必要原油量体系の検討   (目次へ


以上の計算によって得られる各財の必要原油量は1985年にその財1単位円(たとえば1万円)を購入した場合、その生産および購入地までの流通のために間接的に必要な原油量の総額(万円)をあらわしている。そこで、原油量を金額から実物量であらわすために、1985年の平均原油価格(28/バレル)、平均基準為替相場(248円/)および1バレル=0.159Klとして、物量単位(l)に変換したものを<付表>の最初の列にかかげる。

ここで、181部門財のうち、産業連関表において家計消費が0のもの、すなわち生産財としてしか用いられないものは省略した。

各項目に対応させている数値は、1985年の価格で、1,000円分の財を購入した場合にその財の生産に必要とされる原油の総量である。繰り返し述べているように、この原油量には原材料、サービスの各部門間の相互の投入ばかりでなく、資本設備用役の相互の投入構造、輸入財、そしてあらゆる過程における流通経費も考慮したものである。

全体的な特徴をとらえておこう。第一に、エネルギー関係の財は必要原油量が大きい。すなわち、石油製品は全体で最も高く、1,000円の財の生産に間接的に約9.01lの原油が投入されなければならないことが分かる。これはもちろん原料としての原油ばかりでなく、その設備および設備を稼働する原料、電力などをすべて考慮したものである。ついで、電力が同じく2.5lで相対的に高い必要原油量になっている。それに石炭製品が続いている。第二に、逆に一般サービス関係は必要原油量が小さい。金融、不動産、保険と言ったところが最も必要原油量のもっとも小さい部類である。また全体として、比較的エネルギー投入係数の高い輸送関係部門のサービスは必要原油量も高い部類に属し、加工度の高い機械、電気製品関係は相対的に低く、漁業を除く食料品関係は中間、そして、重化学工業関係の一次製品はやや高い水準にあることが確認される。

個別的には、石油製品は必要原油量が最も高い水準にあり、以下で行なうさまざまな分析に与える影響が大きいのでここで細かい検討を加え、必要な展開をしておくことにしよう。石油製品には、原油から結合生産される灯油、ガソリンなどがあるが、それらを一括して石油製品として扱うことは可能か、という特別な問題があるのである。石油製品は1985年に13兆8,167億円の国内生産額があるが、この生産のために直接投入された原油量は1億8755万Klであった (注8)。これは1,000円の石油製品の生産のために13.574$l$の原油が直接投入されたことになる。

ところで、産業連関表によると1,000円の石油製品を購入すると、その59.88\%は生産された石油製品の価格であり、あとの残りは生産地点から消費地点までの平均的な商業マージンおよび貨物運賃である。したがって、消費者が1,000円の石油製品を購入した場合、その製品に対して平均して8.129lの原油が直接投入されていることになる。われわれの計算によれば石油製品1,000円の購入に対して、直接・間接に必要な原油の投入量は9.01lであるから、約0.88lが間接的に必要な原油量すなわち石油の精製過程における原油以外の原材料の投入および設備用役の使用あるいはその他のサービスに間接的に必要とされた原油量、そして生産地点から消費地点までの流通に間接的に必要とされた原油量の総計ということになる。また、1985年産業連関表およびその物量表によれば、この年の石油精製に投入された原油は表~T1のような石油製品を結合生産していることになる。
百万円 百万$Kl$

揮発油(ガソリン等) 4,365,056 36.62
ジェット燃料 283,091 4.33
灯油 1,343,004 34.38
軽油 2,012,514 25.66
A重油 1,026,296 18.96
B重油・C重油 2,265,091 46.34
ナフサ 460,727 10.35
液化石油ガス 327,398 X
その他の石油製品 1,733,514 X

表(T1) 1985年産業連関表における石油精製生産物

ただし、最後の二つについては物量表に表示されていないために記載していない。以上の使途について、二つの違ったものがある。一つは燃料としての使用であり、もう一つは石油化学工業の原料となってプラスチックやナイロンなどに換わって行くものである。まず、揮発油から重油までは基本的に燃料として用いられる。ナフサは石油化学工業の原料となり、液化石油ガスは、プロパンなどにも用いられている。その他の石油製品の中にはアスファルトなどが含まれている。この表をみると石油化学工業の原料となるナフサの割合が少ないように見えるがナフサの相対的に大きな割合は輸入に頼っているのである。すなわち、この年のナフサの輸入量は1,034,835(百万円)、17.49(百万Kl)となっている。

ところで、石油製品に関する上の物量表の値を合計すると(輸入ナフサは除いて)、1億7664万Klであるが、他の液化石油ガスあるいはその他の石油製品のことも考慮すると、およそ原油1lの投入に対して石油製品1リットルが産出されていると仮定しても大きな誤差はないと考えられる(注9)。すると、1,000円の石油製品は平均して物量で、先の原油の直接投入量に等しいおよそ8.129lの物量単位を占めていると考えられる。また、このとき1lの石油製品の平均的な価格は123.02円ということになる。しかし、これはあくまでも平均であって、実際のさまざまな石油製品は市場の需要強度との関係で価格は不均一である。たとえば小売物価統計調査年報(総務庁)によるとガソリンの場合1985年の東京都区部における平均価格は1l当り146円であり、われわれが想定した平均的石油製品価格よりも高い。しかし、灯油は同じく東京都区部で1l当り83円で平均石油製品価格よりも低くなっている。

ここで、この石油製品が原油から結合生産されていることの固有の困難に突き当たることになる。というのは、われわれとしてはガソリンをある一定量使用した場合の必要原油量も灯油をある一定量使用した場合の必要原油量もともに知りたい。というのは、その用途が消費生活にとってはかなり異なったものになっているからである。たとえば、1985年の東京都区部における1,000円のガソリンに対する支出を考えてみよう。この場合われわれの計算によれば必要原油量は9.01lであるが、ガソリンが平均石油製品よりも高い価格がついていることを考えると、この必要量は過大評価している可能性が強い。また逆に灯油の場合は過少評価している可能性が強くなる。これが第一の問題である。さらにまた次のような、より重要な第二の問題がある。先の物量表を考慮しても、たとえば1lの原油からはガソリンが精製によっておよそ0.2lしか得られないのだが、1,000円のガソリンの必要原油量が9.01lというのは、われわれの計算過程から明らかなように原油の精製によって得られるものがすべてガソリンと仮定した場合のものであり、他も同時に結合生産していてガソリンとして得られるものはもっと小さい部分にとどまることを想定すると、必要原油量は何倍にもなってしまう可能性がある。

この第二の問題は、われわれとしてはある特定の石油製品を考えた場合には精製過程で得られるものがその石油製品のみであると想定することにせざるを得ない。この本質的な解決は、モデルとしてわれわれが用いたような1部門1生産物のレオンティェフ型の投入産出モデルではなく結合生産も取り扱えるような線形計画モデルに変更することによってのみ行える。ここでは、それはわれわれの分析の次の課題であると表明しておくにとどめておこう。

第一の問題は、さしあたって次のような方法で解決することにしよう。すなわちわれわれの分析の範囲内では、ガソリン1,000円と灯油1,000円の必要原油量が同じであると考えることは問題があっても、ガソリン1lと灯油1lの必要原油量が同じであると想定することはより問題が少ない。そこで、ガソリン1lと灯油1lの必要原油量は、ともに平均的石油製品1lの必要原油量に等しいと仮定することにする。この平均的石油製品1lの必要原油量は次のようにして求めることができる。すなわち、上でも明らかにしたように、1,000円で平均的石油製品8.129lを購入できる。したがって、1,000円の石油製品の必要原油量が、9.01lであるから、平均的石油製品の1lの必要原油量は、1.109lであるということになる。そこで、たとえばガソリンに対して1,000円が支出された場合、その必要原油量は、9.01ではなく、その購入ガソリンの量は、6.85lであるから(1985年、東京都区部)、必要原油量は7.59lと計算される。また同じく灯油に対する1,000円の支出による購入量は、12.05lであるから、その必要原油量は13.36lであるということになる。

ガソリンと灯油については以上のような展開が可能であるが、家計消費にかかわる他の代表的な石油製品であるプロパンについては、それが気体で測られるために展開が困難である。そこで、プロパンに対する1,000円の支出の必要原油量は平均的石油製品と同様に9.01lであるとして以下の分析を行なうことにしよう。
2.2.5 分析例:自動車と電車   (目次へ

以上で求めた必要原油量の体系を用いてわれわれの原油節約に関する簡単な分析例を示してみよう。この体系は他にもさまざまな場面で家計消費を資源節約へ方向づけることが可能であるが、ここでは、ある一定の距離を自動車を用いて移動することと電車を用いて移動することの原油効率性を比較してみよう。もちろんここでは移動の形態そのものが人に与える効用の差異はいっさい無視し単なる移動の手段としての両者を比較することにする。1985年の国鉄運賃は幹線で平均15.03円/Kmとなっている。したがって、たとえば50km移動するのには751.5円かかることになる。われわれの必要原油量の体系によるとこの生産に必要な原油量は0.717lである。

この原油量は車両等の設備用役の使用、電力などの原材料使用のすべてを考慮している。これに対して、自動車を使用した場合、この車の燃費が12Km/lであると仮定するとガソリンを4.2l使用する。この必要原油量は4.7lである。そのほかに自動車の場合、車両の生産に必要な原油量も考慮しなければならない。車両が100万円で、廃車になるまで10万Km走るとすると、50Kmの車体の用役価格は、500円である。したがって、この用役の生産のために必要な原油量は、0.2lである。さらに修理代を考えなければならない。いまこの修理代が2年に一度の車検だけであるとしその必要額が12万円であると仮定しよう。そして、2年間に3万Km走るとすると、修理代は50Kmで200円となる。このために必要な原油量は<付表>より0.1lである。さらに保険料を考慮しなければならないが、わずかなので省略する。これだけ分の考慮で自動車で50Km移動する場合の必要原油の総計は、およそ5.0lである。車に4人乗ったとすると、一人当りの必要原油量は1.25lである。これは電車の場合の1.7倍になる。表1から明らかなように、電車を当時の国鉄の一般路線ではなく地方の私鉄あるいは国電とした場合にはさらにこの倍率は高くなる。
2.2.6 家計調査項目への対応づけ   (目次へ

国内の各家計はそれぞれ個性的な消費支出を行なっていて、おそらく所得水準の違いだけで消費の支出構成がまったく同じであるような家計は存在しないだろう。しかし、その支出構造は家計の世帯主の年齢、所得水準、あるいは居住地域ごとによく似たパターンをもっていることを否定するものではない。それらの類型ごとの平均的支出構造に対して、われわれの必要原油の体系を適用すれば、必要原油でそれぞれの生活様式を評価することが可能である。このような生活様式の評価を行なうことによって、家計消費支出の面でわれわれが取り組むべき原油節約の方向をさらに明確化することが可能である。

われわれは以下で、価格の比較の困難を避けるために1985年の家計調査年報(総務庁)を用いる。データ作成のために用いられた標本の総計は、7,985世帯である。家計調査年報には品目別、家計の類型別に詳細な支出額のデータが記載されている。最も細かい品目の分類では、消費支出の対象品目が明確になっているもので、524品目に分類されている。これは、産業連関表の183部門分類よりもはるかに詳細で、家計調査年報の項目を産業連関表の部門財に帰属させる必要がある。そこで、われわれは産業連関表の部門分類方針と家計調査年報の項目の説明を参照しながらこの対応づけを行なった。

ただし、産業連関表の中で、最終需要として消費支出に回される部分が存在した部門は116部門であったが、われわれが家計調査年報の消費支出項目を帰属させることができた産業連関表の部門は75部門にとどまった。すなわち、残りの41部門の財については家計調査年報の支出項目を対応させることができなかった。

この全標本データの全支出額の平均額は2,698,430円である。家計はこの他に仕送り、小遣いといった支出品目不明の支出も行なっている。これらも含めた支出額の総計は3,277,373円であり、この総支出額の17.7\%が支出品目不明になっていることになる。この全標本データの把握できる支出額の分について、表1の必要原油量の体系で評価した総計は2411.15lとなる。かりに支出品目不明分もまた同じような商品構成比で支出されていると仮定すると、全支出額の必要原油は、2928.45lになる。またこの全世帯データの平均の1世帯人数は3.71人であるから、世帯の一人当りの消費必要原油量は789.34lとなる。すなわち、日本人一人当りの1年間の平均的な消費を維持するために必要とされる原油量は、一升びん438.5本分になるのである。
2.2.7 世帯類型別データの分析   (目次へ

家計調査年報にはデータを世帯類型別にまとめた結果が記載されている。類型としては、全世帯に関する所得階級別の支出状況、勤労者世帯に関する所得階級別の支出状況そして世帯主の年齢階級別の支出状況がまとめられている。これらの世帯類型別の消費支出をわれわれの必要原油量で評価し、分析を加えることにしよう。

具体的な分析の前に前提となる基本的な事項を確認しておこう。第一に、われわれは各世帯類型ごとの総支出額の規模の差からくる必要原油量の差を取り除くために原油係数という概念を使用する。それは、総支出額100万円当りの必要原油量を指す。たとえば、全データの場合、支出額2,698,430円に対して、必要原油量が2411.15lであるから、原油係数は2.6984で割った893.54lである。この原油係数は、各支出項目に対しても用いる。ただし、その場合は、その世帯類型の総支出額100万円当りのその消費項目の必要原油量をさす。たとえば、全データに関する「いも・豆類」支出額は、7,376円で、<付表>により計算すると、その必要原油は3.44lである。したがって、「いも・豆類」の項目に関する必要原油量は前と同じくこれを2.6984で割って1.27lということになる。

第二に、家計の必要原油に占める灯油、ガソリンなどのエネルギー関係支出は際だって大きい。したがって、単に総原油係数を各世帯類型ごとに比較するのではなく、それをエネルギー的支出にかかわる原油係数と非エネルギー的なものにかかわる原油係数を区別し、さらにエネルギー的な原油係数のうちで、灯油、ガソリン、電気、都市ガス、プロパンガス、その他の光熱費に分けて分析を加える。最後のその他の光熱の中に、薪・炭、石炭、石炭製品(練炭等)などを含めている。また、エネルギー的な必要原油量の計算にあたって、灯油とガソリンについては東京都区部の1985年の価格を用いて先にも述べたような調整を行なっている。

以上の前提のもとに作成したものが表~T2の1〜4列である。各数値の上段は原油係数であり、下段の括弧内は全支出に占める割合である。まず、全世帯に関するデータをみてみよう。総支出に関する原油係数は先に求めたように、893.54である。それをエネルギー的な支出に関するもとの非エネルギー的な支出に関するものに分けてみると、439.471と454.067ほぼ同じになっている。すなわち、上でも述べたようにエネルギー的な支出の必要原油量はきわめて高いのである。家計調査年報によると全世帯平均でエネルギー的な項目への貨幣的支出の総額は226,850円である。すなわち、エネルギー的支出は貨幣単位で総支出額の8.4\%にすぎないにもかかわらず、必要原油量では、49.2%を占めるようになるのである。

所得階級別のデータでは、データの均質性が全世帯の所得階級別データよりも高いと思われるので勤労者世帯のものをとり上げてみよう。

まず、勤労者世帯の総支出に関する原油係数では相対的に高所得者の階級の方が原油係数が低下している。すなわちこれは、高所得者ほど原油使用的財への支出が相対的に低下することを示しているのである。より具体的には、エネルギー的財の支出に関する原油係数が所得の増大とともに低下していることにもあらわれている。より細かく、代表的なエネルギー源である灯油、ガソリンおよび電気についてみてみよう。灯油については、450万円前後の所得階級の原油係数が比較的高くあらわれている。ガソリンは、低所得者ほど原油係数およびその構成比ともに高くなっている。電気についても同じように低所得者の原油係数がやや高いがガソリンほどの所得階級による差はとらえられない。

次に世帯主の年齢階級別によるデータを検討してみよう。全支出の原油係数では全体として年齢が高くなるほど低下しているように見えるが、50歳代ではやや反転している。この世代ではエネルギーと非エネルギーの構成比ではあまり変化はないので、全体としての基礎消費財に対する消費が高くなったことによるものと考えられる。さらに、これは同居する子供の年齢が高くなることによるものと思われる。個別的なエネルギー支出をみると灯油の原油係数が年齢とともに一貫して高くなっている一方で、ガソリンの原油係数は全体として低下傾向にある。これは年齢とともに人は行動力から暖かさのために原油を使用するようになることをあらわしている。

先の相対的に低所得者ほどガソリンの原油係数が高いというのは、世帯主が若いほど所得が低いことの反映でもある。

分類 原油 非エネ エネル 分類 原油 非エネ エネル
係数 ルギー ギー 係数 ルギー ギー

全世帯 893.539 454.067 439.471 全都市 853.245 454.615 398.629
(50.82) (49.18) (53.28) (46.72)
全世帯 899.828 452.215 447.613 5万以上 835.812 454.895 380.917
(勤労者) (50.26) (49.74) (54.43) (45.57)
〜351 981.044 443.529 537.515 大都市 731.604 459.169 272.435
万円 (45.21) (54.79) (62.76) (37.24)
351〜454 937.257 449.946 487.311 中都市 865.136 453.929 411.206
(48.01) (51.99) (52.47) (47.53)
454〜568 916.494 452.062 464.432 小都市 919.195 451.075 468.120
(49.33) (50.67) (A) (49.07) (50.93)
568〜726 894.535 454.161 440.374 小都市 1067.929 451.183 616.746
(50.77) (49.23) (B) (42.25) (57.75)
726〜 826.552 456.687 369.865 町村 1089.512 451.396 638.116
(55.25) (44.75) (41.43) (58.57)

〜24歳 979.139 431.151 547.988 北海道 1201.533 446.875 754.658
(44.03) (55.97) (37.19) (62.81)
25〜29 946.544 439.741 506.802 東北 1071.708 450.922 620.785
(46.46) (53.54) (42.08) (57.92)
30〜34 940.469 447.664 492.805 関東 837.089 455.754 381.336
(47.60) (52.40) (54.45) (45.55)
35〜39 914.029 450.040 463.989 北陸 1020.059 448.940 571.119
(49.24) (50.76) (44.01) (55.99)
40〜44 888.276 451.143 437.134 東海 937.858 449.261 488.596
(50.79) (49.21) (47.90) (52.10)
45〜49 861.720 448.432 413.287 近畿 772.201 459.131 313.070
(52.04) (47.96) (59.46) (40.54)
50〜54 881.405 453.649 427.756 中国 942.815 450.750 492.065
(51.47) (48.53) (47.81) (52.19)
55〜59 910.028 461.710 448.318 四国 940.751 453.245 487.505
(50.74) (49.26) (48.18) (51.82)
60〜64 878.395 468.099 410.296 九州 927.969 453.912 474.057
(53.29) (46.71) (48.91) (51.09)
65〜  859.452 471.598 387.854 沖縄 1029.952 452.424 577.528
(54.87) (45.13) (43.93) (56.07)

表(T2) 家計支出の原油価値による評価

2.2.8 都市階級別データの分析   (目次へ

家計調査年報には都市階級ごとの品目別の支出データが記載されている。上と同様にこのデータから原油係数の地域差を分析してみよう。まず、家計調査年報の都市階級の構成を明らかにしておこう。

大都市 :札幌市、東京都区部、横浜市、川崎市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、北九州市、福岡市

中都市 :人口15万以上の都市(大都市を除く)

小都市A:人口5万以上、15万未満の都市

小都市B:人口5万未満の都市

これらの都市階級別および地域別データを必要原油で評価した表が表~T2の5〜8列である。まず、注目されることは大都市ほど原油係数が低くなっていることである。これはエネルギー的支出の原油係数の中でも、灯油とガソリンの原油係数が都市が大きくなるにしたがって著しく低下しているためである。より大きな都市に住むほど、より原油使用効率のよい生活様式を選択するようになることを意味している。もちろん、より大きな都市ほど平均的支出額がやや増大ししたがって前項で分析したような所得の増大にともなう原油係数の低下の傾向があらわれるので、その分差し引かなければならないが、それだけではすべてを説明することはできない。それはまた、人口が密集したことによるエネルギー効率性の上昇をあらわしているのである。たとえば公共交通機関が発達すればそれだけ、ガソリンに頼らなくなり先の分析にもあったようにより効率のよい移動が可能になるのである。灯油の効率が高まるのも、人が密集したことにより昼の間の居住空間である職場の暖房をより効率的に行なうことが可能になることは明かである。一つの部屋を暖めたとき、そこに一人しかいない場合よりも大勢いた方が一人当りの暖房効率が高くなることは自明である。

さらに、この表では北部になればなるほど原油係数が高くなっていることがとらえられる。これは明らかに暖房用のエネルギー使用が高まることによるものである。
2.2.9 必要原油量の要因別弾力性の計測   (目次へ

これまでの分析から、われわれは家計消費の必要原油総量を規定する要因のいくつかをとらえることができた。しかし、それぞれの要因がどれだけの強さで規定しているのかは明らかにできていない。ここでは、要因別の弾力性を計測することによってこれを明らかにしよう。そのために、家計調査年報の品目別支出額を49の都市ごとに平均値を出したものを使用することにする。すなわちまず、このデータから各都市の家計の平均的な必要原油総量を求める。そしてそれぞれの都市に帰属する要因に回帰させてその弾力性を計測するのである。要因としてとり上げるのは、第一に、各都市の人口密度である。先の分析でも人口密度が高まることはエネルギーの使用効率を高めて平均的な必要原油量を低下させると考えられるからである。第二に、各都市の平均気温である。平均気温が低下するとエネルギーの使用量が高まり相対的な必要原油量も高めると考えられる。第三に、各都市の平均的な消費支出総額である。平均的な支出総額の増大は必要原油量そのものは増大させるが、その中の原油使用強度の高い財への支出割合を低下させることが予想されている。

要因別弾力性を求めるための回帰分析の結果は次のようなものである。

ln C = 3.7618 - 0.0559 ln D - 0.3772 ln T + 0.3660 ln E

各測定値のt値は、それぞれ1.623、-3.647、-4.650、2.382であり、自由度修正済みのR2は0.6064、F値は25.650である。記号はそれぞれC(必要原油量)、D(人口密度)、T(平均気温)、E(消費支出額)をあらわしている。また、lnは各データを自然対数で変換してあることを示している。t値は初めの二つの値が係数0の仮説を1%の有意水準で棄却できることを示し、最後のものも5\%で棄却できることを示している。したがってF値も十分高い。説明力はやや劣っているが、必要原油がこれら単純な三つの要因だけに規定されているとは到底考えにくいことから当然の結果である。われわれにとって必要なのは各係数の弾力値である。

弾力値を比較すると、総支出額がかなり重要な規定要因になっていることが分かる。それは、1%の支出増は0.366%の必要原油量の増大をもたらすことをあらわしている。すなわち、支出の増加は確かに必要原油量の増大をもたらすがその増大する割合は、支出額の増大よりもはるかに小さいことをあらわしているのである。したがって、われわれが観察したように、支出額の増大はそれに対する必要原油量の割合を低下させる、すなわち原油係数は支出額の多いほど小さくなるのである。

平均気温の影響は最も高い。すなわち、平均気温が1\%低下すると、必要原油量は0.377%上昇するのである。

やや意外なのは、人口密度要因が確かに効いてはいるが相対的に小さいことである。人口密度の1\%の増大は0.0559\%の必要原油量の低下しかもたらさないのである。このことから、先の表でみたような都市部における原油係数の低下は、エネルギー効率の上昇によってもたらされていることは間違いないが、より大きな要因は消費額の高さからもたらされているものであることが分かる。
2.2.10 市場価格と原油価値   (目次へ

ここで議論した原油価値は、1985年時点で市場で成立していた価格とは基本的に異なっている。したがってもちろん、現在の時点で成立している市場価格の体系とも異なっている。一般には消費者は市場価格のシグナルをもとに行動しここで示したような原油価値を評価基準にして消費行動をとったりすることはない。しかし前節で示したように、この原油価値にもとづいてより原油総価値が低い消費バスケットの選択をすることは、社会的に必要とされる原油量を少なくすることを意味している。したがって、社会的に原油の使用効率を高めるためには、この原油価値体系を市場の外側から、何らかの形で市場の中に反映させることが必要となる。最も直接的な方法は、各財に現行の市場価格と原油価値体系の差の一定の割合を税の形で、その財に上乗せするか、戻すことである。もちろん、この市場外的操作を、価格が完全に原油価値に一致するように行えば、市場は機能しなくなる。社会的な合意が可能な範囲で、この価格差の解消を行う必要があるのである。
脚注

(1)『石油の実際知識(第4版)』(藤沼茂他著、東洋経済新報社、1986年刊)、『現代の産業:石油化学工業(新訂版)』(川手恒忠他著、東洋経済新報社、1973年刊)、『日本の石油化学工業 ガイドブック』(石油化学工業会)などを参照。(もどる
(2)本節における必要原油体系と原油価値体系の理論的な関係は、理論的枠組みを論じた事項の脚注で示すことにする。そして、本節では基本的に必要原油体系によって議論を進めることにする。(もどる
(3)われわれとは異なり、家計の直接的なエネルギー消費について分析したものに、「家庭用エネルギー需要について」(室田泰弘、中上英俊、伊藤浩吉著、文部省科学研究費補助金エネルギー特別研究、1981年度研究成果報告書所収)がある。また、産業連関モデルでエネルギー強度を議論したものとして、次のものも参照。J.R.Proops,``Energy Intensities, Input-Output Analysis and Economic Development", in Input-Output Analysis Current Development, M.Ciaschini e.d. Chapman and Hall:London, 1988.(もどる
(4)輸入財に関するこのような取り扱いは、置塩信雄「剰余価値率の測定」(『経済学研究』、1959年10月)、および中谷武「投下労働と価格」(『季刊理論経済学』、1976年4月)を参考にした。(もどる
(5)最初に指摘したように、この必要原油量の体系は、その双対体系として原油価値体系をもっている。それは次のようにして求められるものである。いま、第i財1単位の原油価値をvi,(i=1,2,.....,n)および輸入財1単位の価値をvmとし、その行ベクトルv=(v1,v2,.....,vn)とすると、vj(i=1〜n)viaij+vmgj+c'j  (i=1,2, ....n:i≠ l)vl(i=1〜n)viail+vmgc+c'l+1  (i=1,2, ....,n:i≠l)vm = Σ(i=1〜n)vieiによって求められる。この原油価値は生産された時点での各財の必要原油に完全に等しい。しかし、ここで議論している必要原油は生産された点から、さらに消費者が購入する時点までの流通費用が含まれているので、その分の差異がある。第i財に関する必要原油量をこの原油価値を使って表現すると、vidii+vmdmi+(vtdit+vt+1dit+1)+(vk dik+,.......,+vk+pdik+p)となる。すなわち、単に財の価値ばかりでなく生産された後の流通費用の分の原油価値、輸入財構成部分の原油価値も加算されたものになるのである。(もどる
(6)固定設備を厳密に取り扱うためにはフォン・ノイマンモデルで行なわれるように、1期古くなった固定設備を副産物として取り扱う必要があるが、資料とモデルの制約からここでのような限界のある方法に頼らざるを得なかった。(もどる
(7)計算は、[右はTEXコマンドの配列表現、現在変換できないでいる]( \left( \begin{array}{cc} I-A & -e \\ -g & 1 \end{array} \right)-1 )を求めることによって行なった。逆行列計算の精度については、もとの行列とかけた場合、単位行列からの誤差行列の列和の最大値が10-12以下になるように、Hotelling法による収束計算を行なった。(もどる
(8)原油が石油精製以外の部門に投入される量は7%にすぎない。他の部門とは、事業用火力発電がほとんどで、12.45百万Klである。投入される原油のほとんどは輸入に頼っていて、自国で生産される分は0.33\%にすぎない。(もどる
(9)これについては、『総合エネルギー統計』(通商産業研究社、1990年刊)も参考にした。(もどる


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