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2004年2月13日:公開
2004年2月18日:改訂
2004年4月30日:改訂
2004年5月6日:改訂

応用一般均衡モデルによる環境効率リバウンド効果の計測
:日本経済の温暖化ガス排出削減をめぐって

鷲田豊明
豊橋創造大学
全文(PDFファイル:2004年5月6日改訂版)
 
シミュレーションプログラム(EPAM 0.2)
(上記プログラムは改訂されました EPAM0.3
 
概要

 環境効率改善が、環境負荷を増加させるような反応を引き起こし、効果を相殺してしまうというリバウンド効果は、「規制」、「経済手法」、「自発的対策促進」などの環境政策の組み合わせを考えるうえで不可欠のテーマである。
 地球温暖化対策をめぐって、炭素税の導入が大きなテーマとなっているが、それに反対して、産業界が固執する自主的対応も、リバウンド効果の適切な評価を抜きに、有効性を議論することはできない。また、環境税の必要性を語る側の炭素税率についても、環境効率改善に過度に依存し、リバウンド効果を過小評価することによって、低すぎる税率を設定していないかを冷静に検討しなければならない。
 本論文では、これまで部分均衡の中でしか議論されてこなかったリバウンド効果の規模を、33部門分割した日本経済の応用一般均衡モデルによって、実証的に推計した。
 その結果によれば、産業や消費をめぐる弾力性の影響を受け、弾力性が大きくなればなるほどリバウンド効果の規模も増加し、およそ35%から70%のリバウンド効果を念頭におかなければならないことがわかった。この結果によれば、たとえば、二酸化炭素排出量を10%削減する技術も、市場経済のさまざまな反応によって現実にはかなり相殺されてしまい、3%から6.5%の削減効果しか期待できない。すなわち、部分的な削減効果のみ注目したような政策判断は誤った結果をもたらす可能性を示している。
 また、本稿では炭素税についてもシミュレーションしたが、弾力性が大きくなればなるほど、炭素税の効果が増大することがわかった。すなわち、リバウンド効果が大きいような経済状態では、炭素税の効果も大きい。逆は逆である。つまり、経済の弾力性が大きいような状況では炭素税のような経済手法の選択が推薦されるが、弾力性が小さい状況ではより自発的な努力に対する促進が推薦されるのである。


(注)本論文は、2004年3月5日〜6日に英国LEEDS大学で開催される持続可能な消費の国際ワークショップで、その一部が発表された。また、マクロモデル研究会(2004年3月30日:大阪中ノ島センタービル)では、全体が発表された。