現代古典派経済学
パラダイムとしての「富の体系」
鷲 田 豊 明  
(1989年05月20日)
目次
序章 古典派経済学と富概念
   1 富概念の意義
   2 ケインズの「豊かさのパラドクス」
   3 古典派経済学と理論経済学

第1章 富と経済的価値の理論
 第1節 古典派価値論の基底
   1 「評価」価値尺度としての労働
   2 「いつでもどこでも等しい価値」
   3 価値の共同的主観性
 第2節 富の双対概念としての価値
   1 交換過程の双対性
   2 生産過程の双対性
   3 古典派価値論と効用価値説
   4 現実生活の反映としての数学的双対性
 第3節 重農主義のもとでの富と価値
   1 剰余としての富概念の確立
   2 再生産の基本モデルの構成
   3 基本モデルによる富の表現
   4 帰属価値体系と双対定理
   5 効率的技術の選択について
 第4節 石高制における富と権力の重層的双対性
   1 石高による社会的剰余の把握
   2 剰余把握の範囲
   3 価値尺度としての「米」
   4 石高制が内包する基本矛盾
   5 石高制の政治的側面
 第5節 資本制経済における富と価値
   1 スミスによる重商主義、重農主義的富の批判
   2 利潤と資本
   3 双対的動機としての利潤と成長
 第6節 富としての自由な時間
   1 「真の富」概念の展開
   2 剰余時間の定式化
   3 資本制経済における剰余労働の性格
   4 帰属価値体系としての労働価値体系
   5 古典的労働価値説との差異
 第7節 剰余条件の同値性と富の差異性
   1 社会的剰余の三つの形態の同値性
   2 同値性命題の意味するところ
   3 諸価値体系の新技術に対する評価
【補論1】 「マルクスの基本定理」をめぐって
   1 古典的世界を超えて
   2 「一般化された基本定理」の再構成

第2章 経済成長の理論
 第1節 古典派成長理論の基本課題
 第2節 長期均衡としてのセイ法則
   1 セイ法則と現代経済学
   2 古典派経済学とセイの命題
   3 リカード過剰生産論の本質
   4 資本蓄積の持続性についてのリカードの確信
 第3節 古典派成長経路の諸特性
   1 資本制経済の均衡成長経路とその特性
   2 有効成長とターンパイク安定性
   3 資本蓄積ターンパイクの数値例
 第4節 経済成長と欲求の論理
   1 ヘーゲルと欲求発展の動学
   2 自己実現への衝動としての欲求
   3 必要としての欲求と剰余としての欲求
   4 資本制のもとでの欲求発展の個人主義的性格
   5 成長経済における「陳腐化」現象
 第5節 同期化社会と時間の経済
   1 享受における階級差の本質
   2 欲求の体系から時間の体系へ
   3 同期化による時間の高密度化
   4 機械のリズムと人間のリズムの対立
【補論2】 均斉成長経路の一般的展開とターンパイク安定性
   1 一般利潤率と価格体系
   2 均斉成長経路の存在と不安定性
   3 資本蓄積の最大化問題とターンパイク安定性

第3章 再生産費賃金理論の現代的展開
 第1節 古典派分配理論と再生産費賃金理論
 第2節 エンゲルによる古典派賃金理論の完成
   1 機械論的な生命論
   2 保険料を含む労働費用の算出
   3 新生命の価値
   4 進歩性と限界
 第3節 労働者生命をめぐる二律背反命題
 第4節  結合生産物としての生命と労働力
 第5節  生活条件と再生産費賃金率
 第6節 生殖と新生命の価値
 第7節  生活様式と生命価値
【補論3】 生活過程に関する基本命題の一般的証明

終章 現代的貧困の様相 時間的貧困と周辺的貧困

参照文献